北海道苫小牧市は、札幌からもアクセスが良く、自然と産業が調和する魅力あふれる港町です。
この記事では、吉田拓郎の『落陽』にインスピレーションを受けて、JR苫小牧駅から、2022年に就航50周年を迎えたフェリーが着岸する苫小牧西港フェリーターミナルまでのルートで、港町苫小牧の情景をご紹介します。
ぜひ吉田拓郎の『落陽』を聞きながら
本記事の苫小牧巡りを参考に港町を歩いてみてください!
苫小牧港の歴史
苫小牧は、2023年に開港60周年を迎えた、北海道の玄関口として発展してきた港町です。
そのルーツは古く、大正の初期、勇払川河口を利用した漁港造りに始まります。
その後、1924年(大正13年)北海道庁技師・林千秋の「勇払築港論」発表を機に港湾としての勇払原野・苫小牧の豊かな将来性が認識され、幾多の構想を経て、1951年(昭和26年)から本格的な苫小牧港建設が着手されました。
参考:苫小牧港 (とまこまいこう) |北海道開発局|https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kk/kou_kei/ud49g7000000au7y.html
戦後の高度経済成長の時代の流れの中で発展し、北海道の経済を支え続けてきた港です。
苫小牧港って意外と新しい港なんだね!
苫小牧駅前通り
吉田拓郎『落陽』と苫小牧港
吉田拓郎が歌う名曲『落陽』には、現在の苫小牧港西港区から仙台行きのフェリーに乗って旅の帰途に就く“若者”と旅の途中に出会った“じいさん”との一期一会の交わりの情景がつづられています。
この歌が発表された昭和48年(1973年)頃は、第四次中東戦争によりオイルショックが始まる、時代の大きな渦の中にありました。
引用元:落陽 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=IZ1Xgsnbi74
今回の記事は、おじいちゃんといっしょに読むと楽しいかも?
苫小牧駅前通りと鶴丸百貨店
そんな時代に苫小牧駅で列車を降りた若者の眼には、右手に「王子製紙(株)苫小牧工場」の高くそびえる紅白の煙突が、海側に続く駅前通りの右側奥には長らく市民に愛された「鶴丸百貨店」が見えたことでしょう。
「鶴丸百貨店」は、大正 10 年(1921)創業の中島呉服店が、昭和 27 年(1952)に開業した苫小牧初の百貨店でしたが、平成 14 年(2002)に終止符を打ちます。当時の駅前通りの象徴でした。
引用元:苫小牧市|『目でみる苫小牧の百年』
現在の苫小牧駅前通りは、再開発が進み、かつての繁華街とは異なる風景が広がっていますが、その歴史的な背景を知ることで、落陽の歌詞の世界に思いを馳せることができます。
ふるさと海岸・海の駅ぷらっとみなと市場
ふるさと海岸
駅前通りをそのまま南へまっすぐ歩いていくと、ふるさと海岸(地図①)に到着します。
この海岸は泳ぐことはできませんが、砂浜では苫小牧港を出入りする大きな船を眺めたり、波音を聴いたりしながらバーベキューを楽しめるので、夏場を中心に家族連れや若者でにぎわう苫小牧市民の憩いの場になっています。
海の駅ぷらっとみなと市場
苫小牧港に隣接する「海の駅ぷらっとみなと市場」は、地元の新鮮な魚介類が並ぶ市場です。
ホッキガイやカレイをはじめ、さまざまな海産物が手に入り、観光客だけでなく、地元の人々にも親しまれています。
苫小牧港はホッキガイの水揚げ量が 23 年連続日本一で、ホッキガイは「苫小牧市の貝」にもなっています。
市場内の食堂では、すっかり苫小牧名物となった「ホッキカレー」が楽しめます。
苫小牧港で水揚げされた新鮮なホッキガイを使ったこのカレーは、濃厚な味わいと豊かな風味が特徴です。
ホッキガイのプリプリとした食感とスパイシーなカレーが絶妙にマッチし、一度食べたら虜になること間違いなしです。
また、ホッキカレー以外にも、海鮮丼や焼き魚定食など、魅力的なメニューが豊富に揃っています。
市場で食べるホッキカレー。最高でした!
本港地区・キラキラ公園・苫小牧西港フェリーターミナル
RORO船が見える街路
お腹もいっぱいになったところで、いよいよフェリーターミナルに向かいます!
苫小牧港は平成13年(2001)から連続で日本一の国内貨物取扱量となっていますが、それをけん引するのが貨物を積んだトラックがそのまま乗り降りできるフェリーやRORO船で、それらの船の多くが港の入口近くにある本港地区を利用しています。
RORO船(ローローせん):トラックがそのまま乗り・降り(ROLL-ON ・ROLL-OFF)できる船
ぷらっとみなと市場から本港地区に向かって歩いていくと、「管制信号(地図③)」が見えてきます。
管制信号はその先端に取り付けてある電光盤でI(入航信号)、O(出航信号)、F(自由信号)、X(禁止信号)のいずれかのサインを表示して、苫小牧港を出入りする船舶の安全確保に大きな役割を果たしています。
※苫小牧港では、総トン 500 トン以上の船舶に対して管制信号を実施し、港の船舶交通を管制している。下記のサイトは海上保安庁が発行している信号の方法と意味が紹介されてます。
https://www.kaiho.mlit.go.jp/01kanku/muroran/anzen/shingokansei.pdf
また、このあたりの倉庫の間からフェリーとともに北海道と本州等の間の海上物流を支えるRORO船が見えます。
苫小牧港西港区は平らな砂浜を掘り込んで造った港なので、日常生活の中でその全景を見る機会がなかなかないのが残念ですが、このように街路樹のある通りの先に大きなRORO船の姿が見られる風景(地図④)は、苫小牧ならではです。
道の向こうにそのまま貨物船が見える景色なんだね
キラキラ公園
2023年、キラキラ公園には開港60 周年を記念して、昨年 8 月“ TOMAKOMAI ”のモニュメントが設置されました。
夏場には多くの家族連れで賑わい、苫小牧市民の憩いの場となっています。
また、冬には“けあらし”(海面から立ち上る霧)に包まれる幻想的な風景が広がります。
苫小牧西港フェリーターミナル
苫小牧港は、日本国内でも有数の貨物取扱量を誇り、フェリーターミナルは多くの観光客や物流を支える重要な施設です。苫小牧港西港フェリーターミナルル(地図⑥)は、北海道と本州を結ぶフェリーの発着地として多くの人々に利用されています。このエリアには、観光客が楽しめるスポットが点在しており、苫小牧の魅力を満喫できるエリアでもあります。
苫小牧西港フェリーターミナルは、苫小牧駅からバスやタクシーでアクセス可能です。現在のターミナルからは、定期的に仙台行きのフェリーが運航されておりますが、実は『落陽』が発表された昭和48年(1973)は仙台-名古屋行きフェリーが4月に就航した年でもあり、改めて当時の時代を振り返るのも良いかもしれませんね。
苫小牧ポートミュージアム
今、苫小牧港周辺ではカーボンニュートラル社会の実現に向けた脱炭素化のための様々な取り組みが動き出しています。
本編で取り上げたフェリーについては、CO2発生量をこれまでより大幅に削減できるLNG燃料フェリーが令和7年(2025)初頭に就航予定となっています。
また港湾地域の脱炭素化に集中的に取り組むための「苫小牧港港湾脱炭素化推進計画」が作られ、港周辺に立地する複数の企業が連携して脱炭素化に取り組む計画も次々と打ち出されてきています。
さて、苫小牧港周辺には他にも様々な魅力が散在していますので、また機会があればご紹介させていただきたいと思います。
今回の最終目的地、「苫小牧西港フェリーターミナル」はみなとオアシス代表施設にもなっていて、3階にある「苫小牧ポートミュージアム」では港とフェリーの魅力などが分かりやすく紹介されています。
苫小牧港に来られる機会があれば、是非こちらにもお立ち寄りください!
苫小牧を訪れる際には、本記事で紹介するスポットに
ぜひ立ち寄ってみてください。
今回訪れたスポット
①ふるさと海岸
苫小牧市汐見町 3 丁目 4−14
0144-34-5551
(苫小牧港管理組合)
②海の駅ぷらっとみなと市場
苫小牧市港町 2-2-5
0144-33-3462
定休 水曜(祝日は営業)
営業時間 7:00〜16:00
③管制信号
苫小牧市港町 1 丁目 6-15
⑤キラキラ公園
苫小牧市入船町 3 丁目 1
0144-34-5551
(苫小牧港管理組合)
⑥苫小牧西港フェリーターミナル
苫小牧市入船町1丁目 2-34
0144-33-9261
苫小牧ポートミュージアム
苫小牧市入船町1丁目 2-34
苫小牧西港フェリーターミナル 3F
0144-34-9261
(総合案内所)
定休 なし
開館時間 8:00〜20:00
入場料 無料
こちらの記事は、北海道みなとの文化振興機構事務局にて、平澤充成さん執筆の「北海道みなとまち紀行 第6号」をもとに、再構成を行いました。
北海道みなとまち紀行は
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当NPO会員の有志が書いた北海道のみなとまちの魅力を紹介する紀行文です。